ども、ヒカルです。
2016年に公開されたヒューマンドラマ映画『ムーンライト』
アカデミー賞受賞作品ということで、予備知識ゼロで挑んだわけですが、深い映画でしたねー。
そして最高の作品だった。
この作品は、バリー・ジェンキンスが監督を務め、本作の主人公のモデルとなっているタレル・アルヴィン・マクレイニーを原案として迎えて制作されています。
マグ
本編は3部作で構成され、ストーリー性・芸術性に富んだ極めてメッセージ性の強い内容となっています。
また、世界での興行収入は2,500万ドル越えと、世界的に認められた大ヒット映画です。
この記事では、そんな映画『ムーンライト』のざっとしたあらすじ解説と、この映画を観ての僕なりの感想をお届けします。
『ムーンライト』はどこで観れる?動画配信情報
『ムーンライト』は、2020年2月現在U-NEXTと
huluにて配信中で無料視聴ができます。
どちらも今なら、無料体験ができるので無料でサービス内の映画やドラマが楽しめますよ!
なお、動画配信サービスは作品ごとに配信期間が設けられている場合がありますので、登録はお早めに!
映画『ムーンライト』あらすじ解説
[su_youtube url=”https://youtu.be/c-vD-mO9Th0″]マイアミの貧困地域でコカインを売る売人フアン(マハーシャラ・アリ)。いつも通り自分のシマを見に来た彼は、建物に逃げ込む少年を見かけた。
気になったフアンは、空き部屋に隠れていた少年を見つけメシへと誘う。
終始うつむき顔の少年の名はシャロン。あだ名はリトル。
“オカマ”という言葉も知らずいじめられるシャロンは、唯一の友達ケヴィンと話し、再びフアンのもとへと足を運ぶのだった…
本作の本筋は、LGBT問題や貧困による愛情不足などの社会問題、人と人との絆をテーマとしています。
そして、悲しくもそれらすべての問題の中心にいるのが主人公シャロンです。
この映画では、主人公シャロンの成長を3段階に分割して構成し、それぞれの時期にシャロンがぶち当たる問題・障壁に葛藤し悩み向き合う様子を描いています。
- 幼少期の「リトル」
- 少年期の「シャロン」
- 青年期の「ブラック」
そこを踏まえてここから、映画『ムーンライト』のあらすじの解説をしていきます。
「リトル」

(c)A24
いじめられっ子のシャロン。
同級生に“オカマ”と意味も分からない言葉でののしられている彼を、たまたま通りかかった売人フアンが気に掛けるところから物語は始まります。
マイアミの貧困街であるこの町は、黒人が独自のコミュニティを形成しており閉鎖的で薬物もはびこる危険な地域。
この「リトル」の章では、シャロンが置かれている状況や、彼に降りかかっている様々な問題が提起されています。
「シャロン」

(c)A24
高校へとあがったシャロン。
幼少期から状況は悪化し、成長とともに悩みも深刻化していきます。
と、ここで新たにシャロンを必要にいじめてくるクラスメイトが登場。
もはやアメリカの青春系映画にはお決まりで登場するような、ド定番のガキ大将。
シャロンは、いじめっ子にどう対峙するのか。
この「シャロン」の章では、深刻化する悩みに葛藤し、もがくシャロンの様子を描いています。
高校時代のシャロンを演じた俳優は、「どっかで観たことある切ない顔だな」と思ったら『イコライザー2』で絶妙な演技を見せてくれたアシュトン・サンダースでした。
今作で、彼のカリスマ性を感じることができると思います。
「ブラック」

(c)A24
時は経ち、大人となったシャロン。
彼は「ブラック」として、高校時代からは想像もつかない屈強な肉体へと変貌しています。
危険な貧困地域で、ある種成功した“ブラック”にある日、一本の電話がきます。
この「ブラック」の章では、これまでのシャロンがどうやって過去の問題を振り払ったのか。
そして、未だうつむき顔の彼の抱える問題とはなんなのかを描いています。
演じたのは、元陸上選手のトレヴァンテ・ローズ。
とにかく肉体美とアマイマスクで、思わず見惚れてしまいますよ。
【感想ネタバレ】映画『ムーンライト』観るか観ないかなら間違いなく観て大正解だよ
僕はこの映画『ムーンライト』は全く守備範囲外で、鑑賞を決めたきっかけは単に‟本作がアカデミー賞受賞作品だったから”
たったそれだけの動悸で予備知識もいれずに観ることを決意したわけですが、観て大正解でした。
本当におもしろかった。
それではここから、全面的にネタバレを含んでの僕の感想をお届けします。
これでもかとシャロンを自身に投影できるつくり
この映画を観てまず感じたのは、「とにかくシャロンの生涯のみに限定して作品を描いていたな」ということ。
フアンが早々に死にましたが、その理由は不明のままでしたよね。
ケヴィンの生い立ちも、シャロンの母親がどうして施設入りしたのかも作中では全く描かれてはいません。
シャロンのみにフォーカスすることで、よりリアルなシャロンの人柄や心情を描け、観る人が自分自身に置き換えて物語を観進めていけたんだと思います。
僕らにはあまり理解できないアメリカの黒人社会と貧困問題。
ですが、シャロンの身になって物語を観ていくことで、彼の悩みがいかに深刻かということをまざまざと感じることが出来るいい映画でした。
フアンの存在が、シャロンを強くした
リトルの章で、シャロンを気にかけ可愛がる売人フアン。
僕は、もう彼のあの男らしさというか不器用なかっこよさが大好きです。(勿論、賞を受賞したマハーシャラ・アリの演技力も最高)
多くは語らないものの、がっちりとシャロンの心をつかみ、端的に伝えたいことを伝えるフアンかっこいい。
そして、それはシャロンが高校時代にレゲエ野郎をぶん殴ったことに繋がり、ブラックへと仕上がる糧となっていましたよね?
ドゥーラグ(ラッパーが被るような黒いビーニーみたいな布)を被り、ゴリゴリマッチョ、高級車には王冠。
すべてフアンからインスパイアされていますよね。
シャロンが強く(精神的にね)なれたのは、フアンがいたから。
愛情を受けず育ったシャロンにとって、父親代わりであるフアンからの影響が最も大きくて、大好きだったんだろうなって。
もう名脇役です。アカデミー賞ものです。納得。
あのラストがまさに『ムーンライト』の伝えたいこと
『ムーンライト』が、僕の中で大正解だと感じた最大の理由は、あのラスト(終わり方)です。
ハッキリとした結末ではなく、あえて僕ら観る側に答えを委ねた「不完全燃焼タイプ」のラストでしたからね。
僕の主観ですが、こういった深刻なテーマのヒューマンドラマ映画は、おおよそアンハッピーエンドな予想をしてしまいます。
“主人公が撃たれる”とか、“独り暗闇に消えていく”とか…
「おぉい、なあんでよ…」と言いたくなるような結末です。
ですが、『ムーンライト』はそういった暗い結末ではなく、最終的にはケヴィンと両想いという結末で締めくくられます。
一応はハッピーエンドなわけです。
とはいえ、「で、どうなったの?」と思ってしまうような終わり方でもありましたよね?
“幸せに暮らしましたとさ”とか、“テレサとかママとかどうなったのさ!”とか言いたくなるハッキリしない結末だったんですよ。
ただ、このハッキリとしない結末が「深いテーマを孕んだ本編全体の深刻性を保つ効果があったんだな」と鑑賞30分後に理解できました。
結末がハッキリしないがために、僕はこの映画を観終わった後お風呂で悶々と考えたわけです。
「シャロンはその後、どうなった?」と。
で、本編を脳内でもう一度振り返って、不完全燃焼な部分を自分なりに消化していきました。
そこで気付いたわけです。
この一連の流れはハッキリとした結末だった場合ありえなかったなって。
何が言いたいかというと、物語をフラッシュバックさせることで僕ら自身がシャロンと向き合い、僕ら(つまりこの物語を観た人が)独自の考えを展開できるわけです。
未だ現実社会でも解決していない深刻なテーマであるからこそ、ハッキリとしない結末で観た人それぞれに解釈と回答を委ねる。
「生き方は他人に決められるんじゃなく、自分で決めろ」
フアンのあの言葉がここで効いてくるわけです。
この映画は、リアルであるがためにシャロンに強く共感できる人も少なくないと思います。
そういった中で、ハッキリとした結末を提示してしまうことは、あのフアンの言葉の重要性を薄めてしまうことになると思います。
「シャロンは一例に過ぎず、もっと過酷な状況や深刻な悩みを抱えた人はいる。シャロンはこの道を歩んだ。あなたが、例えシャロンのように生きられなくても間違いではないんだよ」
そう、訴えかけているように感じました。
どうでしょう。このラストが、『ムーンライト』の伝えたかったことのように思えませんか?
映画『ムーンライト』海外での評価と日本での口コミ
アメリカの映画評論の大手Rottentomatoesでは、『ムーンライト』は評論家からほぼ満点の98点を獲得しています。
それだけ、映画好きの人にとって衝撃的な作品だったということが伺えます。
この映画は映画が存在する理由だ
男らしさ、セクシュアリティ、人種的アイデンティティ。そして、それらが交差する部分を鋭い視点で描いている作品だ
日本での口コミ
ムーンライト映画館でオイオイ泣いた。
— ゐた (@_guchiai) December 27, 2019
https://twitter.com/janta44/status/1163277931503742976
https://twitter.com/kakijiro/status/1113828060413845507
まとめ
衝撃的かつ感動的な作品だった映画『ムーンライト』
この記事では、『ムーンライト』のあらすじ解説と感想をお伝えしてきました。
僕の語彙力ではうまく表現できないことがまだたくさんありますが、とにかく観てほしいと言いたくなる作品でした。
正直、ヒューマンドラマを観なれない人にとっては、ちょっと平坦過ぎる演出かもしれません。
でも、観て何かしら感じることのできる2時間です。無駄にはならない!
ということでこの辺で…それでは、また。
映画『ムーンライト』作品情報
作品名(洋題) | ムーンライト(moonlight) |
監督・脚本
プロデューサー |
バリー・ジェンキンス
ブラットピット |
配給(制作会社) | A24・プランBエンターテインメント |
上映時間 | 111分 |
キャスト | アレックス・ヒバート(リトル)
アシュトン・サンダース(ティーンエイジャーのシャロン) トレヴァンテ・ローズ(ブラック) マハーシャラ・アリ(売人フアン) アンドレ・ホランド(大人のケヴィン) ナオミ・ハリス(シャロンの母親・ポーラ) ジャネール・モネイ(フアンの妻・テレサ) |